【甲子園】早川が本拠地でプロ2勝目 継投リレーでDeNAに完封勝利 高寺が決勝打 阪神4−0横浜DeNA(2025年9月19日)

対DeNAベイスターズ

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毎回異なる人物の視点から、勝敗にとらわれず心の揺れや日常の断面を言葉にしています。 “試合を知らなくても読める”、そんなブログです。

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試合概要・あらすじ

ルーキー早川が甲子園で6回無失点の好投を見せ、今季2勝目を挙げた。4回に高寺の適時打で先制すると、5回には森下がソロホームランで加点。6回にも代打ヘルナンデスが追加点を奪い、岩貞、ドリス、岩崎の継投でDeNAを完封に抑えた。

大学で出会った夫婦、松下智樹(26)とひかり(26)。ひかりは夫の寝息が阪神の勝敗と連動していることに気づき、密かに観察を続けている。久々の甲子園観戦で、その仮説を確かめようとするが——。

寝息はふうふう〜阪神タイガース観戦記2025年9月19日〜

出会いと日常

智樹と私は同い年の26歳、大学の野球サークルで出会った夫婦や。
彼は高校まで野球部、大学では野球サークル。

私は入学式のあと、キャンパスでの勧誘に押されてマネージャーになり、そこで知り合った。コンパや飲み会に明け暮れる周りをよそに、智樹は京都・花園の下宿から学校とバイト先の中華屋を往復するだけの真面目な学生やった。

初めて話したのは、サークルの道具整理をしてる時やった。

「これ、どうやって片づけるんかな」

戸惑ってる私に、智樹が

「こうやで」

と丁寧にバットを並べ直してくれた。一本ずつ、まるで大切な宝物を扱うみたいに。その時の真剣な横顔を見て、この人は根っから野球が好きなんやなと思った。

付き合い始めたのは2年生の秋。智樹の方から

「今度、映画でも見に行かへん?」

と誘ってくれた。岡山弁が時々混じる話し方が可愛くて、

「でーれー美味しかった」

なんて言われると、つい笑ってしまう。

デート先でも「阪神、今日勝ったかな」と携帯をチェックしてる姿に、最初は「野球ばっかり」と思ったけど、それが智樹らしさやった。智樹の影響で、私も気づけば阪神タイガースを応援するようになってた。勝った日は一緒に喜び、負けた日は一緒に悔しがる。そんな風にして、野球が私たちの共通言語になっていった。

岡山出身やけど智樹は就職も京都に決め、今は烏丸通りにある観光客向けのお土産屋で働いてる。八つ橋や抹茶チョコを包むとき、紙の端が1ミリでもずれたら「やり直しや」とやり直す几帳面ぶり。

包装紙をカットするときのハサミの音、セロテープを引く時の「ピリッ」という音、全部が決まったリズムらしい。バイトの大学生に「機械みたいですね」と笑われても、むしろ誇らしげに折り直してる。

家に帰ってきて「今日は八つ橋237個包んだ」なんて報告されると、私は「ご苦労さん」と言いながら、この人の几帳面さが愛おしくなる。

朝は必ず6時半に起きて、コーヒーを淹れながら前日の阪神の試合結果をチェック。勝ったら「よっしゃ!」と小声で叫び、負けたら「まあ、明日や」とつぶやく。その後、新聞のスポーツ欄を隅々まで読んで、

「昨日の佐藤のバッティング、ええフォームやったなあ」

と独り言。この一連の流れが、結婚して二年の今でも変わらない智樹の朝のルーティンや。

私も学生の頃は、家と学校とバイト先を行き来する地味なタイプやった。結婚して二年——今は八幡の実家近くで二人暮らし。私は駅前のカフェでアルバイトを続けながら、通信制のデザイン学校で課題を抱えてる。

几帳面な夫と、大雑把で時々寝坊する妻。似たもの夫婦なのか、ちょうどええバランスなのか。

大学の同じマネージャー仲間で親友の瑞樹は今も「ええ男探し」に余念がない。ブランドの紙袋をぶら下げて、

「今日の合コン、イケメン率80%やで!」

と根拠のない自信を見せる。

学生時代、私は数合わせで連れて行かれたものの、自己紹介で「彼氏います」と言って場を白けさせ、あとで瑞樹に「空気読まんといてや」と怒られたこともある。

一方、そんな私の夫の智樹には、ちょっとした謎がある。

寝息や。

寝息の謎

普段は「すうすう」と子どもみたいに眠るのに、ときどき「ふう〜、ふう〜」と荒い呼吸をする。まるで小型の扇風機が隣に置いてあるみたいに。布団に残るカレーの匂い、扇風機の音と混じってその寝息が響く夜は、私の方が眠れなくなった。

結婚二度目のこの夏、私は気づいてしまった。交流戦、西武に三連敗した夜。布団に横になりながら悔しさを反芻していたら、隣の智樹がすやすやから「ふうふう」へと寝息を変えた。次の日も、その次の日も。ロッテに勝った当日は「すうすう」。その次に負けた日はまた「ふうふう」。

毎夜ではない。定期的というわけでもない。でもその「ふうふう」と激しい呼吸をしながら眠りこける智樹にイライラして、気づけば私も「ふう〜、ふう〜」と息が荒くなった夜もあった。智樹の真似をしてる自分がおかしくて、クスっと笑ってみたりしたけど、結局また眠れなくなる。

それで私は研究を始めた。枕元にメモ帳を置いて、「7/16 負け、ふうふう」「7/19 勝ち、すうすう」と記録していく。カレンダーにも勝ち負けと寝息のパターンを書き込んだ。勝った日は青丸、負けた日は赤丸。智樹が眠っているうちに、携帯のボイスメモで寝息を録音したこともある。再生してみると、確かに違う。勝った日の寝息は穏やかで、負けた日は荒々しい。

勝った日と負けた日で明らかに違う。

この男の寝息は阪神タイガースと密接につながってる——ジャングルで新種の生物を発見したらこんな気持ちになるのかなと思うほど、私は私の発見が嬉しかった。

確信と疑い

ただ、ほんまにそうなんやろか?

記録をつけ直しても勝ち負けで寝息が変わってるように見える。
でも夜中にメモを取ってる自分を客観視すると、

「私が勝敗にこじつけてるだけちゃう?」

という疑いも湧いてくる。

データは揃ってる。パターンも見えてる。
でも科学的根拠はない。

智樹に「なんか怖い夢でも見たん?」と聞いても、

「夢?昨日見たかなあ」

と素知らぬ顔。

本人に自覚がないのがまた不気味で、またおかしい。

ストレスなんか、体の不調なんか。
それとも阪神と一心同体なんか。

確信と疑いの間を行ったり来たりして、答えは出ない。

けれど確かめるにはちょうどいい舞台がある。
今日は久々の甲子園。CSを見据えて、相手はDeNAベイスターズ。

今夜の寝息で、私の仮説の答えが出るかもしれへん。

甲子園での発見

優勝を決めてから十日。
私も智樹も、きっと阪神ファンの中の多くの人が、少しほっとして肩の荷が降りた気がした。

それでも一週間が経ち、十日が経つと、来るCS決戦へ向けてまた別の何かを背負ってる気がする。

昨日のマツダでのカープ戦を中継で見ていて、マツダスタジアムの空席の多さに不安になったけど、甲子園はやっぱり満席や。

今日はそのCSで当たる可能性が極めて高いDeNAベイスターズが相手。
先発は智樹も注目してたジャクソン。こちらはルーキーの早川くんで迎え撃つ。

佐藤も4番の定位置に戻り、木浪くんと梅野もスタメンに名前を連ねた。

残暑は残るけど、少し秋めいた甲子園の空の下、私たちは1塁側アルプスに腰を下ろした。


前回登板の横浜戦でプロ初勝利をあげた早川が、今度は甲子園で再度DeNAと対戦する。

グッと腰を低くしたフォームから力のある球を投げ込むけど、1番蛯名、2番桑原に連打を浴び、ノーアウト1・3塁のピンチ。

迎えるは打撃好調の筒香。つまらせた当たりはライトフライ。
続く4番ビシエドを6−4−3のゲッツーに打ち取り、無失点で切り抜けた。

「全部詰まってるな」
ハイボールに口をつけながら智樹が言う。

「詰まってる?」私が聞き返すと、

「うん。蛯名のヒット以外は全部つまらせてるやん、早川のボール」

「そういうことか」
私は感心して智樹の説明を聞いた。

思えば、初めて野球観戦に行った時も、
“ピッチャーの決め球”とか“ケースごとのポジショニング”とか、経験者らしく丁寧に、そして熱っぽく語ってくれた。

それまで勝った、負けたでしか野球を観てなかった私も、随分目が肥えてきた気がする。


3回表、先頭のジャクソンを討ち取った後、打席には蛯名。

「なんかDeNAって牧いないのに、打者揃いすぎてない?」

智樹に問いかけると、

「そういう戦略なんやろな。けど阪神かってめっちゃ打者育ってるやん、数年前からは考えられへんで」

確かにそうや。

その蛯名の強烈な三塁線への打球を佐藤が横っ飛びでキャッチした。大ファインプレーや。

「うちの4番は守備もメジャー級や」
そのプレーに智樹は相好を崩し、ハイボールを煽る。


4回裏、好投を続けるジャクソンやったが、先頭の森下がヒットで出塁。

佐藤は倒れるも、大山が四球で1アウト1・2塁のチャンス。
木浪が倒れ、ため息に包まれた甲子園やったが——

高寺がライト前へタイムリーを放つ。
相手ミスも重なり一挙に2点が入った。阪神2−0DeNA。

「なんか高寺っていいとこで打ってる気がするねんなー」
鳴り響く六甲おろしを背中で受けながら私が言う。

「守備もいいしなあ。コンタクトうまいんだよ」
智樹もメガホンを叩いて全力で没入していて、声だけが返ってきた。


5回裏、早めの継投のDeNAはマウンドに山崎康晃。

2アウト後、森下がすくい上げた打球は高く舞い上がり、左中間に吸い込まれる。

大歓声の甲子園。悠然とダイヤモンドを回る背番号1が頼もしい。阪神3−0DeNA。

聞き慣れた音にふと横を見る——智樹が肩をいからせ、「ふうふう」と息を吐いてる。

(寝息だけちゃうやん)

心の中で突っ込んで前を向く。
なるほど、森下のホームランを見てもこうなるのか。

興奮した時も、寝てる時と同じ呼吸パターンになるんや。
大好きな人の新しい発見はやっぱり嬉しい。

阪神が勝って興奮すると「ふうふう」になる。
今夜このまま勝ったら、きっと「すうすう」で眠るはず。

けど、これも私の思い込みなんやろか?
また疑いが頭をもたげる。


6回裏には木浪が今日もツーベースを放ち、代打のヘルナンデスがタイムリーで1点を追加。阪神4−0DeNA。

この二人は昨日も印象的な活躍をしてた。

試合は終盤に入る。

6回まで、ほぼ毎回ランナーを背負いながら、守備にも助けられつつDeNAの得点を許さなかった早川にかわり、7回は岩貞、8回はドリスが0行進を続ける。

その間に阪神は守備もこまめに入れ替える。
きっとCSに向けて、選手の見極めや調整もしてるんやろう。


9回表、中野と森下。
レフトからセンターへ守備変更した高寺。

そして捕手の梅野以外は皆、ポジションがスタメンと入れ替わった。

マウンドには岩崎。休養期間を経て本日1軍復帰した守護神や。

久しぶりの登板もポーカーフェースは健在で、危なげなく勝ち切り阪神勝利。

また夜が来る

勝利を見届けアルプス席を立ち上がると、9月の風が心地よく背中を抜けた。

アルプス席には、次の戦いに向けた張り詰めた空気が、拍手の余熱みたいに残っていた。

私は夫の横顔を見ながら、心の中でつぶやいた。

「さて、今夜はどんな寝息を立てるんやろか」

勝った日も負けた日も、この人の寝息に振り回される。

夫婦って、そんなふうにして出来ていくんやろなあ。

アルプスを抜ける風に合わせるみたいに、私も大きく息を吸って——ふう、と吐いた。

本日の試合結果

スコアボード

1 2 3 4 5 6 7 8 9
DeNA 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 1
阪神 0 0 0 2 1 1 0 0 × 4 6 0

責任投手

  • 勝利投手:[ 阪神 ] 早川 (2勝0敗0S)
  • 敗戦投手:[ DeNA ] ジャクソン (10勝7敗0S)
  • セーブ:なし
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2025年春夏・阪神物語アーカイブ(vol.1&2) 公開中
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