朝、東京駅に着いたとき、空は少しくもっていて、すこしだけ寒かった。
「ま、ドームだから関係ないけどね」って、お父さんが言った。
そういうの、ちょっとかっこいいと思った。ぼくは今、小学5年生で、野球がいちばん好きで、大好きな阪神タイガースの試合を生で見るのは、今日がはじめてだった。
お母さんと妹はディズニーランドへ。
ぼくとお父さんは、東京ドームで巨人戦。まるで、マンガのなかみたいな1日が始まった。
1回の表だった。
はやすぎて、心の準備ができてなかった。
3番、佐藤輝明。ぼくがいちばん大好きな選手。テル。サトテル。
そのテルが、いきなり、ホームランを打った。
カッていうこすったような音がして、高く上がった打球はレフトスタンドの黄色に吸いこまれていって、阪神ファンがどっと立ちあがった。
気づいたら、ぼくも立って、お父さんが買ってくれたタオルを振って、「テルー!!」ってさけんでた。
お父さんとハイタッチした手のひらが、ちょっとだけジンジンしてた。
ホームインしたテルが、次の打者の森下とハイタッチしたのを見たとき、
「夢のコンビだ……」って、心の中で言ってた。
7回、阪神の前川選手にデッドボール。
周りから「なんや今の!」って関西弁の大きな声が飛んで、お父さんも「これはダメだろ!」って言ってた。
ぼくらの前の席の阪神ファンのお兄さんたちも「怪我してへんか?」ってざわざわしてた。
ぼくも「がんばれ!」って大きな声を出した。
声がふるえてたけど、ちゃんと届いてほしいって思った。
そして、8回。第4打席が、テルにまわってきた。
「もう1本、打ってくれたら最高だね」って、すっかり酔っ払って顔が赤くなったお父さんが言った。
ぼくは黙って、息をとめて、見てた。
ゴッ。
確かに、テルのバットがボールを捉えた音がして、
そして、また、レフトスタンドへ。
ぼくは思わずジャンプして、「テルーーー!!!」ってまたさけんだ。嬉しすぎて目の裏が熱くなった。
六甲おろしが流れて、みんなで歌った。
お父さんとまたハイタッチした。こんどは前の席のお兄さんたちともハイタッチした。
もう、ほんとにマンガのなかにいるみたいだった。
その裏、阪神のピッチャー・桐敷投手が、巨人の選手にデッドボールを当ててしまって、ちょっと空気がこわくなった。
でも、まわりの阪神ファンが「桐敷、どんまい!」「今のはしゃーないやろ!!」って言ってくれてて、
ぼくは、関西弁がこわいけど「大丈夫。阪神ファンは、味方だ」って思った。
なんか、不思議と安心した。東京ドームで黄色に守られてるようだ。
試合は4対3で、阪神が勝った。
ぼくが見に来て、阪神が勝った。ぼくの前でテルが、2本ホームランを打った。
もう、これ以上、何もいらないってくらい、すごい1日だった。
東京ドームから出たとき、空はまだくもってたけど、心の中はすっかり晴れてた。
お父さんに言った。
「ぼく、テルみたいに、ホームラン打てるようになりたい」
お父さんは、やさしく笑ってうなずいた。
【今日のスコア】
2025年4月5日(土)@東京ドーム
阪神 4 − 3 巨人
📘この記事は「TIGERS STORY BLOG」の投稿です。
\夢のホームランは、きっと自分の足で近づける。/
▶︎【スーパースポーツゼビオ】少年野球スパイク・グローブ・練習用品はこちら

コメント