私の帰る町 〜阪神タイガース観戦記 2025.3.29

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親友の優子が「チケット、取れたで!」とLINEをくれたのは、ほんの数日前のことだった。
広島駅から少し歩いて、昼の光に包まれたマツダスタジアムへ向かう。スタンドに腰をおろしたとき、心が少しざわついていた。

大学進学を機にこの街に来て、もう9年。
和歌山の祖父が体調を崩したと聞いて春に帰省したばかりで、「このままここにいていいのかな」と、ふと考えてしまっていた。
就職して、友達もできて、好きな街になった。けど、地元に帰る選択肢も、この春からずっと頭の中にあった。

5回裏、1点を追う場面で、二番手としてマウンドに上がったのは工藤泰成。
育成から開幕一軍を掴んだ、あの工藤くんや。

けれど、あっという間にツーアウトから三者連続四球。
ボールが高めに浮いて、キャッチャーがたびたび立ち上がる。
周りの応援の声も、なんとなく歯切れが悪くなっていった。

——これが、プロのマウンドってことなんやろな。

投手交代のコールの後、隣で見ていたおじさんが、ぽんと手を叩いた。
「また戻ってくるわ、あの子は」
その言葉が静かに胸に残った。

そして6回。打席には森下翔太。
初球を見送って、2球目——真ん中高めのストレートを完璧に捉えた。

乾いた音が、スタンドに響く。
白球が一直線に左中間スタンドへ消えた。
逆転ツーラン。スコアボードが「3-2」になった瞬間、私の胸の中でも何かが切り替わった。

「あんなふうに、ちゃんと振り切れるって、すごいな」

優子が言ったその言葉にうなずきながら、私はふっと思った。
この気持ちを持ったまま、いずれは地元に戻ってみるのもいいかもしれん。
広島が好きなのは本当。その思いも胸に抱きながら、大好きな祖父母のことを、ちゃんと考えてみよう。

9回。昨日と同じく、岩崎がマウンドに立った。
打者を追い込んでからのスライダーが外角に決まり、三振。
試合終了のコールとともに、空を見上げた。

夜の空に灯るライトが、やけにあたたかく感じた。

まだ答えは出ないかもしれん。
でも、前に進む方向だけは見えた気がする。
森下の一発は、私の心にもまっすぐ飛び込んできた。

【今日のスコア】
2025年3月29日(土)@マツダスタジアム
阪神 3 – 2 広島(勝利:及川、HR:森下)

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