【横浜スタジアム】阪神デュプランティエ完封で7連勝 熊谷が全打点でチーム牽引 阪神3-0横浜DeNA(2025年7月5日)

阪神タイガース観戦記
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試合概要・あらすじ

阪神が7連勝。阪神は0-0で迎えた4回表、熊谷の適時三塁打で2点を先制する。そのまま迎えた6回には、再び熊谷の適時打が飛び出し、貴重な追加点を挙げた。投げては、先発・デュプランティエが9回3安打無失点の快投。今季2度目の完封で5勝目をマークした。敗れたDeNAは、打線が3安打無得点と沈黙した。

川崎在住の牧野朱美(29歳)は、横浜市内のITベンチャーで総務・人事を担当している。土曜日の緊急対応に追われる中、親友の元彼でパーソナルトレーナーの田村守(29歳)からの突然のLINEで横浜スタジアムへ。営業と部長の間を繋ぐ調整役に疲れた朱美にとって、守は唯一何も取り繕わずに話せる相手だった。筋肉の話しかしない守との野球観戦を通して、朱美が見つけた小さな安らぎとは——。

愛しのマッチョマン〜阪神タイガース観戦記2025年7月5日〜

土曜日のSlack、繋ぎ合わせる役の重さ

川崎のマンションの一角、土曜日なのにパソコンの画面にSlackの未送信がまた増えた。

「牧野さんから言ってもらえれば丸く収まるんで」

営業の田中からのDMが昨夜の11時に飛んできて、月曜のプレゼンに間に合わせるための緊急調整らしい。部長の山田は家族サービス中で既読スルー。結局、総務の私が間に入って

「田中さんの件、確認いたします」 「山田部長、お手すきの時にご確認をお願いします」

と、休日出勤の言い訳を考える。

在宅勤務になってから、こういう調整が全部チャットになった。顔が見えない分、言葉を選ぶのに時間がかかる。送信ボタンを押す前に何度も読み返して、それでも「これで伝わるかな」と不安になって、結局下書き保存。

スマホには
「すみません、確認します」
「承知いたしました、調整します」
「恐れ入りますが」
の未送信が7つも溜まっている。
50人の会社で、私がいないと回らない調整が1日に何件もある。

机の端には付箋に書き写した”すみませんでした”が何枚も重なって、それが私の声なのか誰かの声なのか、もう形がわからない。

だけど守からのLINEは未送信にならない。

昨日の夜、守からメッセージが来ていた。
『明日横浜で阪神戦だろ?一緒に行かない?肩仕上げすぎてタンクトップで電車きつい。』

意味わからないのに、”はいはい”と打った瞬間にちょっとだけ笑った。

営業と部長を繋ぎ合わせる役をやってる私でも、守には何も直さず返せる。久々に球場の空気に沈んでしまいたかったのもあって、未送信はスマホに残したまま、私は外に出た。

親友の元彼という居心地の良い距離感

横浜スタジアム周辺は人で賑わっている。待ち合わせ場所で、腕のあたりをまるで誰かの視線で撫でるみたいに指先でなぞっている姿を見つけた。

「守。仕事終わりで何してんの。」

近づいて声をかけると、当たり前みたいに笑う。

「昨日クライアントがインスタに俺の背中載せたんだよ。」
「……それで?」
「褒められたら仕上げるしかないだろ。触っていいぞ。」
「触るかよ。」

吹き出しそうになった。

「お前、筋トレばっかりだな。」
「普段は脂質計算してんだって。球場だけはチートデイ。筋肉もたまには息抜き。」
「知らんわそんなもん。」

隣を通りかかった高校生が筋肉自慢の会話を聞いて苦笑いしていく。
恥ずかしいのはどっちだろう。

「何でこんなバカとまだつるんでんだろ。」

そっと呟いて、でも誰に笑われても笑い返せるこの人が、今の私にはちょうどいい。

もともと守は私の親友の佐和子が付き合ってた人だった。
佐和子とは大学からの仲で、就職してからも月イチで会ってたのに、守の話が出るようになってから何だか気まずくなった。

「朱美ちゃんは守のこと、どう思う?」

なんて聞かれても、正直に「筋肉バカだと思う」とは言えなくて。
佐和子は守の真面目なところばかり褒めてたけど、私には筋トレの話しかしてこない。

2人が別れたのは去年の秋。理由は聞いてない。佐和子からも守からも。

でも別れてしばらくして、守から突然LINEが来た。

『阪神ファンだったよな。今度一緒に見に行かない?』

佐和子は野球に全然興味なかったから、守も我慢してたんだと思う。阪神の話をする相手が欲しかったんだろう。私も佐和子に守のことを聞かれるのが気まずくて、野球の話だけなら気楽だった。

最初は罪悪感があった。親友の元彼と球場に行くなんて。でも守と一緒にいると、職場での調整とか、佐和子との微妙な距離とか、そういうのを全部忘れられる。

佐和子には今も言えてない。守と野球を見に行ってることを。

熊谷の一撃とスタンドの歓声の中で

初回、2回と危なげなく立ち上がったデュプランティエが3回裏に初めてヒットを許したとき、守が耳元にぐっと寄ってくる。

「朱美!送りバント来るぞ!」
「近いってば。」

デュプランティエと坂本のバッテリー、は送りバントを失敗させ、素早い牽制で流れを切った。

この人のズレた声がどれだけ大きくても、ちゃんと崩れないものを同じスタンドで見ていると少しだけ息がつける。

4回表。混む前にトイレ行こうと立ち上がりかけたときに、大山が右方向にヒットを放つ。

「大山、右方向うまいな。暑くなると広角に打つんだよ。」

守は謎のドヤ顔。

「何知ってんの、お前。」

私は吹き出して、腕をペンとはたいた。

続いて前川がライト前ヒット。チャンステーマのリズムが人の声と重なって膨らむ。

「熊谷!ここだって!今年の阪神はチャンス繋がんだって!」

うるさい守の声が、熊谷のバットに一瞬で切られる。
レフトフェンス直撃のタイムリースリーベース。阪神が先制、2点。

「やった!熊谷、すごい!昨日から大当たり」

守がハイタッチを求めてくる。

「汗でベタベタだから嫌。」

代わりに太い腕に拳を当てたら、思ったより固くて指がちょっと痛い。

積み上げてきた人にちゃんと順番が回ってくること、それに一発で応えること、あんなふうに堂々と結果を出せる人がちょっと羨ましい。

6回表。

「DeNAの打線は怖いから、追加点欲しいな」

守がどこかのコーチみたいに言う。

すると呼応したように、大山がまた右方向へ2塁打。前川も逆方向へヒットで繋ぐ。熊谷にまた回る。

ここでも熊谷は粘り、しぶとくライト前にボールを運ぶ。追加点、阪神3−0横浜。

「かー、マジか熊谷!最高すぎる。俺が……」
「守、お前何もしてない。」
「だよなー。」

大きく口を開けて笑う守を見ながら、私も思わず笑った。

7回以降、DeNAが継投に入ってもデュプランティエは淡々と打者を打ち取っていく。クリーンナップに仕事をさせない姿に、守は拳を握って「すげーなデュープ」と低い声で言った。

9回のマウンド。死球でランナーを一人出しても最後の打者を三振に仕留めて試合終了。
来日2度目の完封完投。

「さあ、来い。」

守が大きな掌を出す。

「打ってこいって何様だよ。」

息を整えてから、私は右拳を作った。

パチン。

湿気を含んだ横浜の空に、拳の音が跳ねた。

横浜の夜風と消えないスマホの光

指先に守の腕の熱が残っていて、ズボンで拭ってもすぐには消えない。

帰り道、守は相変わらず筋肉の話をしてる。
明日も背中の日だとか、プロテインを変えてみるとか。
私は適当に相槌を打ちながら、スマホの未送信フォルダを確認した。

「田中さんの件、調整いたします」
「山田部長、お疲れ様です」
「恐れ入りますが、ご確認をお願いします」

7つの未送信が、まだそのまま残ってる。

でも今日は送らなくてもいいかなと思った。
川崎の部屋に帰ったら、また月曜から調整の日々が始まる。
営業と部長の間に立って、言葉を選んで、角が立たないように繋ぎ合わせて。

それでも今日みたいに、何も考えずに「やった」って言える時間があるなら、きっと大丈夫。

「朱美、また今度な。」

守が手を振って改札の向こうに消えていく。 筋肉と阪神の話しかしない、佐和子の元彼。
私が誰にも言えない、一番楽な相手。

横浜の夜風が頬を撫でて、スマホの画面が暗くなった。

本日の試合結果

2025年7月5日(土)横浜スタジアム
阪神 3-0 横浜DeNA


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