花火のある夜に。〜阪神タイガース観戦記2025年4月22日
火曜日に早退するのは、これが初めてだった。
熱も咳もない。けれど、会社に残る理由も、今日は見つからなかった。
月曜の会議で押しつけられた資料の訂正。上司の「とにかく謝っといて」で終わった、いつもの責任転嫁。
そのどれもが重たくて、でも声を上げるほどの怒りでもなくて、ただじっと胸の奥に溜まっていく感覚だけが残った。
昼、奈保からLINEが届いた。
「今日の先発、才木君だよ。あと、風、強いみたい。」
それだけだった。
私は、もう決めていたのかもしれない。
阪神が好きで、でも会社ではそれを口にするほどの情熱があるふうにも見せたくなくて。
けれど本当は、火曜の夜にスタンドへ向かうことに、誰よりも期待していた。
横浜スタジアム。
四月の終わりだというのに風は鋭くて、じっとしているとすぐに肌が冷える。
けれど、ここに着いたときから、何かが少しだけ動きはじめた気がした。
奈保は変わらず、木浪の応援グッズを一式用意してきていた。
隣にいても、べつに喋らない。
それでも視線の先が同じことだけは、いつもちゃんと共有できている。
その静けさが、今日は妙に心地よかった。
試合が動いたのは、2回表。
佐藤輝のライト方向への打球。私は自然に立ち上がっていた。
三塁ベースへ滑り込む彼の姿が、視界の真ん中を貫いた。
グラウンドを駆ける「背番号8」を見つめながら、私は息を止めていた。
4回にもまた佐藤輝。
今度は右中間への二塁打。
風に押し潰されそうにも見えた打球は、見事逆境をはねのけて野手の間を転がっていく。
気づけば私は、風の冷たさを忘れていた。
4回裏。才木がツーアウト満塁のピンチを背負う。
緊張がスタンドを包む。
私は、呼吸の仕方を忘れたように、黙ったままその一球を見つめた。
打席のバウアーが空振りし、ピンチは切り抜けられた。
その瞬間、何かがほどけたような気がした。
7回表。
近本の打球が、ライトスタンドへ飛び込んだ。
風に乗って、ぐんと伸びていくボールを見上げながら、奈保が声を上げた。
「ナイス!チカ!」
その声が嬉しくて、私は手を叩いた。
何かが、ちゃんと届いた感覚だった。
才木は7回裏に1点を失ったが、流れは渡さなかった。
投手リレーは及川へ、そして石井・岩崎へと続き、スタジアムの空気は静かに、けれど確実に勝ちへと傾いていった。
最後の打者が空振り三振に倒れたとき、アウェーを忘れさせるくらいの拍手が球場を包んだ。
その音の中で、私はひと呼吸おいたあと、静かに手を打ち始めた。
ヒーローインタビューが終わったあと、音が上がる。
打ち上げ花火だった。
知らなかった。
奈保も少し驚いた顔で空を見ていた。
「初めて見たかも、スタジアムで花火」
そう言って笑った顔に、何かを言いかけたけれど、やめた。
言葉にしないほうが、今日はいいと思ったから。
冷たい風は止むことはなかったけれど、
私は、その夜のスタンドで思った。
29歳。仕事にも慣れ、すり減らしてきた日々の中で、
奪われずに持ち帰れるものが、ちゃんと自分にもあったんだと。
【今日のスコア】阪神 4 – 2 DeNA(横浜スタジアム)
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