俺も一本、打てるかな。〜阪神タイガース観戦記 2025.4.4

阪神タイガース観戦記

「……で、黄猿って誰ですか?」

新入社員の佐野くんにそう返されたのが、先週の金曜。
入社式後の新入社員との懇親会の席で入魂の「おっかないねぇ〜〜」(大好きな漫画・ワンピース黄猿の口真似!)を出した直後だった。

沈黙。箸の音。ノンアルコールの炭酸のはじける音。
あの空気、思い出すだけで胃が痛い。どうやら誰もがワンピースを読んでるわけではないらしい。

可愛いね、もダメ。タメ口もダメ。気をつかって、気をつかって、気をつかいすぎて、
最近、俺は何をしゃべってるのか、よくわからなくなってきた。

「チケットあるけど、行くか?」

そう言ってくれたのは、同期の出世頭山下だった。部長になっても付き合いは変わらない、無口で頼れる男。「課長補佐」というよくわからない役職の俺以上に考えることも責任ある仕事もあるだろうに、俺みたいな愚痴は言わない。
得意先の巨人ファンから譲ってもらった東京ドームの一塁側シート。
もちろん三塁側に越したことはないが、この際贅沢は言えない。

18時。東京ドーム前の人波の中を歩きながら、俺は気づいていた。
こういう「無理にしゃべらなくていい時間」が、最近、自分のまわりにどれだけ少ないかを。

試合が動いたのは3回表、2アウトからだった。
佐藤輝明、森下と凡退して、「ああ、今日も沈黙か」と思った矢先。
大山が、スコンとセンター前にタイムリーヒットを打った。

振り抜いたあとも何も言わない。
塁上で帽子をちょっと触ったくらい。
でも、ベンチの選手が一斉に立ち上がって手をあげたのを見て、
「この人、信頼されてるな」と、思った。

背中で示す。余計なことは言わない。
……なんか、誰かに似てるなと思ったら、すぐ隣で静かにガッツポーズをしてる山下だった。

7回。木浪の走者一掃タイムリーが決まったとき、東京ドームの一角が震えた。
黄色のタオルがぐるんぐるん回って、俺も思わず立ち上がった。
もう周りの視線なんてどうでもいい。

ベンチから飛び出してくる若手たち。
でも、木浪は照れたような笑顔を一瞬だけ見せて、すぐに顔を伏せユニフォームの土を払う。
村上もそうだった。7回1失点の好投をしても、多くを語らない。
ヒーローインタビューも、言葉は少なかったけど、明日投げる後輩ピッチャーを気遣っていた。

試合後、ドームの外に出たら、冷えた空気が重たく肌に張り付いた。まだ夜は寒い。
山下がぽつりと、「大山、いいな」と言った。

俺はそれに、何も返せなかった。
でも、心の中ではずっと思っていた。

俺も、一本、打ちたい。
声じゃなくて、行動で。
滑らない話じゃなくて、結果で。
仕事で、いつか「背中で示す」ことができたら——なんてことを、東京ドーム帰りの47歳が本気で考えていた。

【今日のスコア】
2025年4月4日(金)@東京ドーム
阪神 7 − 2 巨人

📘この記事は「TIGERS STORY BLOG」の投稿です。
\背中で語る男たちに、俺もいつか追いつけますように。/                        あ、そうだ。
この前、後輩の女子に「部長、ちょっと頭皮ケアとかしたほうがいいっすよ」って言われた。
苦笑いしながら、その日のうちに『キュアラフィ』ってやつをポチった。
今じゃ、朝シャンもわりと悪くないと思ってる。                               ▶︎【キュアラフィ】頭皮のニオイ対策シャンプーはこちら

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